2020年6月20日土曜日

プロキシ(Proxy)環境下での本書の演習の実行

はじめに

職場や学校などでは、ネットワークに接続するためにプロキシ(Proxy)サーバーと呼ばれるものを介する場合が多いと思います。そのような環境下では、本書でネットワーク接続を必要とする演習をそのままでは実行できません。

下記の設定を行えば、全ての演習を実行できるようになりますが、上級者向けの内容ですので、職場や学校のネットワーク管理者など、ネットワークに詳しい方と一緒に作業することをお勧めします。

aptコマンド

ソフトウェアのインストールの際などに実行するaptコマンドを用いるための方法です。この設定を行うことで、OSの更新も可能になります。

まず、ターミナルソフトウェアLXTerminalを起動し、以下のように管理者権限のテキストエディタmousepadで設定ファイル/etc/apt/apt.confを作成します。
$ sudo mousepad /etc/apt/apt.conf
このファイルに下記の内容を記述します。「プロキシサーバー名」や「ポート番号」は環境によって異なりますので、ネットワーク管理者にお尋ねください。
Acquire::http::proxy "http://プロキシサーバー名:ポート番号/";
Acquire::https::proxy "https://プロキシサーバー名:ポート番号/";
Acquire::ftp::proxy "ftp://プロキシサーバー名:ポート番号/";
Acquire::socks::proxy "socks://プロキシサーバー名:ポート番号/";
記述が終わったら、ファイルを保存してからmousepadを閉じてかまいません。

以上で、「sudo apt -y install (パッケージ名)」、「sudo apt update」などのコマンドが実行できるようになります。

ブラウザやwgetコマンドどなど

次に、ブラウザや、ファイルのダウンロードなどで用いるwgetコマンドを利用するための方法です。
(wget コマンドは、本書の旧バージョンでは用いましたが、最新バージョンでは用いません)

ターミナルソフトウェアLXTerminalを起動し、以下のように管理者権限のテキストエディタmousepadで設定ファイル/etc/environmentを編集用に開きます。
$ sudo mousepad /etc/environment
多くの場合 /etc/environment は何も書かれていない空のファイルですので、そのまま以下の3行を記入してください。「プロキシサーバー名」や「ポート番号」は環境によって異なりますので、ネットワーク管理者にお尋ねください。もし何かが書かれていた場合も、その内容を壊さないように注意しながら、ファイルの末尾に以下の内容を記します。
http_proxy=http://プロキシサーバー名:ポート番号/
https_proxy=http://プロキシサーバー名:ポート番号/
ftp_proxy=http://プロキシサーバー名:ポート番号/
以上の設定を記述したらファイルを保存してテキストエディタを閉じます。この設定を読み込むためにRaspberry Piを再起動してください。再起動後、ブラウザでインターネット上のウェブサイトを閲覧できるようになっているはずです。

時刻合わせ

プロキシ環境下ではRaspberry Piの時刻合わせが機能しない場合が多いと思います。そのような場合、もし職場や学校内に時刻合わせサーバーが存在すれば、下記の方法で時刻を合わせることができます。

ターミナルソフトウェアLXTerminalを起動し、以下のように管理者権限のテキストエディタmousepadで設定ファイル/etc/systemd/timesyncd.confを開きます。
$ sudo mousepad /etc/systemd/timesyncd.conf
ファイル内で下記のような箇所を見つけます。
(略)
[Time]
#NTP=
#FallbackNTP=0.debian.pool.ntp.org 1.debian.pool.ntp.org 2.debian.pool.ntp.org 3
.debian.pool.ntp.org
このうち、NTPに関する行の先頭の「#」を削除し、「=」の右辺にお使いの時刻合わせサーバーを記述します。 時刻合わせサーバが存在するかどうかはネットワーク管理者にお尋ねください。
記述後、Raspberry Piを再起動すれば時刻が合うようになります。

プロキシ環境下で時刻合わせサーバーが提供されていない場合、Raspberry Piの時計を自動で合わせることができません。
その場合、下記のコマンドで手動で時計を合わせるのが良いでしょう。
例えば、2024年8月6日23:07に合わせたい場合、下記のコマンドで実現できます。
sudo date 080623072024

下記の省略形も可
sudo date 0806230724
sudo date 08062307


プロキシ(Proxy)環境下での本書9章と10章の実行

さて、以上で本書の内容をプロキシ環境下で学べるようになりましたが、9章と10章を学ぶ際にはもう一点、注意すべきことがあります。

これらの章では、PCやスマートフォンのブラウザを通して、同一ネットワーク内のRaspberry Piにアクセスし、回路を制御します。この際の模式図が下図です。このPCやスマートフォンでは、通常のインターネットへのアクセスの際にプロキシサーバを経由しなければなりませんが、同一ネットワーク内のRaspberry Piへアクセスする場合は、プロキシサーバーを経由せず直接アクセスせねばなりません。
そのために、Raspberry PiのIPアドレス(ここでは192.168.1.3とします)を「プロキシの例外サイト」としてあらかじめ登録しておく必要があります。


Windowsの場合の例外サイトの設定法を示したのが下図です。「設定」から「ネットワークとインターネット」→「プロキシ」と辿り、「手動プロキシ セットアップ」の「編集」ボタンをクリックするとプロキシサーバーおよび例外サイトを設定できます。図ではセミコロン(;)で区切ったうしろに、192.168.1.3が例外サイトとして登録されていることがわかるでしょう。
この「例外サイト」の設定はmacOSにも存在します。「システム環境設定」→「ネットワーク」
→「詳細」→「プロキシ」です。

しかし、iOS(iPhoneやiPad)の場合、この例外サイトの設定は存在しないため、iOSでプロキシの設定自体を無効にする(すなわち、上の図でインターネットへのアクセスができない状態にする)しかありません(pacファイルと呼ばれるものをサーバーに設置してこの問題を回避する方法もありますが、ここでは割愛します)。

androidの場合、Wifiの設定に例外サイトの設定があるのですが、この設定が存在しない場合(あるいは機能しない場合)は、やはりプロキシの設定を無効にしてRaspberry Piにアクセスせざるを得ないことがあります。

2020年6月12日金曜日

Raspberry Pi Zero W 系の機種で本書の演習を行う方法

はじめに

本書の演習で Raspberry Pi Zeroシリーズを用いる方法はサポートページで解説すると述べました。本ページにでその解説を行います。

Raspberry Pi Zero W 系 (以下 Pi Zero W 系) の機種では、GPIO ポートにピンヘッダが取り付けられた Raspberry Pi Zero WH (以下 Pi Zero WH) が最も簡単です。ピンヘッダが取り付けられていないと、本書で用いるオス-メスタイプのジャンパーワイヤを用いることができません。
Pi Zero W の後継である Pi Zero 2 W も登場していますが、2024年7月現在、ピンヘッダ取り付け済のバージョンは販売されていないのが現状です。
このようにピンヘッダが取り付けられていない機種に対しては、ピンヘッダを自分で取り付けるか、ピンヘッダの代替を自分で用意する必要があり、ハードルが上がることに注意してください。

また、Pi Zero W 系の機種は、搭載メモリ量が 512MB と少ないためデスクトップでブラウザを使うのにも支障が出るレベルです。ですので、Pi Zero W 系の機種は「デスクトップなど不要」と思えるような上級者向けのものだと考えるのが良いと思います。

周辺機器の接続方法

Pi Zero 2 Wと周辺機器との接続は下図のようになります。
図からわかるように、以下のものが必要となります。
Pi Zero 系の機種をセット販売で購入した場合、「HDMI(メス)-ミニHDMI(オス)変換アダプタ」や「USB OTGケーブル」はセットに含まれる場合もあるようですので、ご確認ください。

なお、microSD カードはなるべく高速で高性能なものを使うことをお勧めします。Zero 系の機種はメモリが512MBしか搭載されておらず、microSDカードをメモリの代替として用いる「スワップ」という技術が多用されるためです。
性能の低い microSD カードを用いると、OS の更新時などにおいて処理が止まり、結果的に OS の再インストールが必要になることが多いように思います。

なお、ピンヘッダが取り付けられていない Pi Zero 系の機種で電子工作の演習を行いたい場合、以下の方法がありますが自己責任でお願いします。
  1. まず、下記のようなテストワイヤをGPIO部の穴に差し込んで使うという方法がまずあります。ただし、これはあくまでテスト用であり、本書のように何度もGPIOを利用する場合、何度も抜き差しすることで接触が悪くなることが考えられるためお勧めできません。
  2. それ以外には、下記のように 40 ピンのピンヘッダをハンマーで打ち込む GPIO Hammer Header という製品があります。日本のサイトでは売り切れの場合もありますが、下記のスイッチサイエンスでは、定期的に入荷するようです。 なお、amazon.co.jp でも買えるようですが、レビューを見る限り装着に必要な治具 (Jig) が付属しない可能性があり、お勧めしにくいです。 海外通販を利用できる方なら、公式から Jig つきのもの Pimoroni: GPIO Hammer Header (Solderless) – Male + Female + Installation Jig を購入するのも良いでしょう。 治具 (Jig) の利用法はこちらで見られます。

  3. 最後に、ピンヘッダ 2×20 (40P)を半田付けする方法です。半田付けが得意な方以外にはお勧めできません。 個人的な感想ですが、一般的なセンサモジュールなどよりも半田ごてで熱すべき時間が長く、かなり難易度が高いと思いました。

本書の演習の実行について

Pi Zero W 系の機種を用いて本書の演習を行う場合、注意が必要なのは下記となるでしょう。
  • 5.6 カメラのシャッターの演習:カメラモジュールを接続するための専用ケーブルが必要
  • 5.7 MP3ファイルの再生:オーディオジャックがないので、音声はHDMI経由のみでの出力となるでしょう
  • 6.5 音声のボリューム:同様に音声はHDMI経由のみとなるでしょう
  • 10.4 キャタピラ式模型へのカメラの搭載:カメラモジュールを接続するための専用ケーブルが必要
なお、カメラモジュールの専用ケーブルとは、例えば下記のものです。Pi Zero 用のものと Pi 5 用のものの両方が使えます。Pi 5 用のものの方がケーブルの長さを選べる点は便利ですが、ケーブル自体がやや硬いので、好みは分かれるでしょう。 Pi Zero 系の機種をセット販売で購入した場合は付属する場合があるようですので確認してください。 Pi Zero 用のケーブルで Pi Zero 2 W にカメラモジュールを取りつけた様子が下図です。
ケーブルを取り付ける際、金属が露出した端子面を、どちらも緑色の基板の方を向くようにします。基板上のカバーを引き出し、ケーブルを差し込んだ後でカバーを押し込むことでケーブルが固定されます。


デスクトップやブラウザの利用に関する注意

本書で学習する場合、「デスクトップでブラウザで補足ページを開きコマンドなどをコピーしてターミナルに貼り付ける」というスタイルで学習するのが最も容易です。

しかし、Pi Zero 系の機種の計算能力では、ブラウザがまともに動作しないことが多いと思います。ページ表示の待ち時間が長く、十分な時間待ったとしてもページが表示されるとは限らない、というのが主な症状です。

さらに、そもそもグラフィックをもったデスクトップを利用すること自体、OS が新しくなるとともに厳しくなっています。 2024年7月時点での最新 OS Bookworm では、初回起動時の OS の更新でグラフィックが固まり、何もできなくなったという経験があります。
これらの問題は、 Pi Zero W 系の機種のメモリが少ないことが原因と思われます。

この症状は OS が新しくなるにつれて深刻化しています。そのため、2024年7月時点での最新 OS Bookworm よりも、一世代前の Legacy OS である Bullseye の方が安定して動作するように個人的には思います。
そのため、Pi Zero W 系の機種を用いる場合、インストールする OS として Bullseye を指定することが無難だと思います。

さらに、ブラウザの利用をあきらめ、 「ディスプレイ・マウス・キーボードを接続せずにRaspberry Piを利用する(2)~SSH編 (本書旧版の補足ページ)」の解説に従い、 Windows や macOS から Raspberry Pi へターミナルソフトウェアでログインして利用する、という方法を用いるのが現実的です。 この方法を用いると、電子回路の制御には Pi Zero W 系の機種を用い、補足ページの閲覧は Windows や macOS を用い、コマンドの貼り付けはターミナルソフトウェア経由で行う、ということが可能になります。

とはいえ、この方法は Linux に慣れている人向けの方法です。ですから、Pi Zero W 系の機種は初心者向けとは言い難いところがあります。

なお、以上のように「ターミナルソフトウェアでログインして利用」の方法が確立したら、デスクトップの起動をやめてしまうのも、メモリ消費量の削減になり効果的です。そのためには、デスクトップ左上のメニューから「設定」→「Raspberry Piの設定」を起動し、「ブート」の項目を「デスクトップ」から「CLI」に変更して再起動すればよいのです。そうすることで、デスクトップが開かず、コマンドラインインターフェースのみのOSが起動するでしょう。

なお、この設定を元に戻したければ、コマンドを受け付ける画面で
sudo raspi-config
を実行することで raspi-config を起動し、「1. System Options」→「S5 Boot / Auto Login」→「B4 Desktop Autologin」の順に選択すればよいです。

以上のような対策をとったとしても、OSの更新に何時間もかかることがあります(特に Bookworm では)。ですので、OSには不要なアプリケーションをインストールしておかない、という配慮も必要になります。 使わないアプリケーションの更新に何時間もかかる、ということがあり得るからです。
そういう意味で、インストールするOSは Full 版ではなく通常版の方が良いですし(Lite はさらに難易度があがるのでお勧めしません)、 下記のように chromium ブラウザや firefox ブラウザなど、更新に時間のかかるアプリケーションをを削除してしまうのも良いでしょう(これらの更新にはかなりの時間がかかるため)
sudo apt -y remove chromium* firefox rpi-firefox-mods rpi-eeprom

2020年6月11日木曜日

旧版との違いについて

はじめに

「ラズパイ4対応 カラー図解 最新 Raspberry Piで学ぶ電子工作」は旧版である「 カラー図解 最新 Raspberry Piで学ぶ電子工作」の改訂版です。

旧版とどのような違いがあるのか、本ページでまとめます。

旧版との違い


全体に関して

全体的には最新のハードウェアと OS に対応したことが大きな変更点です。
  • Raspberry Pi 4 対応
  • 最新の OS (2020年5月リリースのRaspberry Pi OS) への対応

2章:インストール法

旧版では、OS のインストールに NOOBS というパッケージを用いた方法を解説しましたが、新版では 2020年2月に新たに公開された Raspberry Pi Imager というソフトウェアによるインストール法を解説しています。

NOOBS ではインストール作業が Raspberry Pi 上で行われたのですが、Raspberry Pi Imager では、皆さんが普段お使いの Windows か macOS でインストールが行われます。そのため、インストールの難易度が少し下がることが期待されます。

4章:用いる開発環境

旧版では IDLE という開発環境を紹介しましたが、新版では Thonny という開発環境を用いるよう変更しています。それに伴い、推奨する Python のバージョンは Python2 から Python3 となりました。ただし、旧版からどちらのバージョンの Python でも動作するように記述されていました。

5章:タクトスイッチで用いる GPIO

旧版では、タクトスイッチで用いる GPIO が以下のように章ごとに異なっていました。
  • 5章:GPIO 24
  • 10章 : GPIO 17
新版ではこれを以下のように統一しました。サンプルプログラムもそれに伴って変更されていますので、旧版用のプログラムを新版用に用いることのないようにしてください。
  • 5章、10章:GPIO 27
また、タクトスイッチをカメラシャッターにすサンプルプログラム 05-04-sw-camera.py では、よりカメラに似た挙動となるよう、実行中にプレビュー画面を表示するようにしました。
さらに、タクトスイッチで音声ファイルを再生するサンプルプログラム 05-05-sw-mp3.py では、音声再生用プログラムとして mpg321 から mplayer に変更しました。これによりプチプチいっていたノイズが消えます。

7章:小型LCD

I2C 接続する小型 LCD を「Raspberry Pi キャラクタ液晶ディスプレイモジュール完成品」に変更しました。

8章:DCモーター用のモータードライバ

旧版で用いたモータードライバ TA7291P は入手困難になりましたので、代替品として「DRV8835使用ステッピング&DCモータドライバモジュール」を用いるように回路を変更しました。このモータードライバを「電池ボックス 単3×3本 リード線・スイッチ付」により乾電池3本で用います。

8章:ハードウェアPWM信号を出力する方法

旧版ではサーボモーターを制御するためのハードウェアPWM信号の出力に WiringPi-Python を用いましたが、新版では pigpio というライブラリを用いるよう変更しました。

旧版用のパーツセットを購入してしまった場合

本書の旧版用のパーツセットを購入してしまった場合、モータードライバ TA7291P が同梱されています。手元にこのモータードライバしかない場合、以下に示す回路の配線図を代替として用いてください。

図8-11 を TA7291P で実現する方法


図9-12 を TA7291P で実現する方法


図10-4 を TA7291P で実現する方法


図10-6 を TA7291P で実現する方法


図10-13(応用PDF内) を TA7291P で実現する方法


2020年6月9日火曜日

ディスプレイがRaspberry Pi と相性が悪い場合の対処法

Raspberry Pi には、相性の悪いディスプレイがあるという問題があるようです。そのようなディスプレイでは、OSをインストールしたmicroSDカードを挿入してRaspberry Piに電源を入れてもディスプレイに映像が映りません。

本ページではその場合の対処法を記します。

0. 準備

Raspberry Pi 用に OS をインストールした microSD カードを PC に接続します。そして、エクスプローラーの「PC」の項目を見ると、下記のように「bootfs」というディスクが存在していることがわかります。ここをダブルクリックすると、中に「cmdline.txt」や「config.txt」というテキストファイルがあるので、用いている OS に対応するファイルをメモ帳などのテキストエディタで開きます。

1. 用いている OS が最新 (Bookworm) の場合

2023年10月にリリースされた、2024年8月時点で最新のOSである、Bookworm を用いている方は、「cmdline.txt」を編集する必要があります。 通常は、「cmdline.txt」をダブルクリックすると、メモ帳などでファイルが開かれるでしょう。その中に、下記の1行が記されています。
console=serial0,115200 console=tty1 root=PARTUUID=877fcbb5-02 rootfstype=ext4 fsck.repair=yes rootwait quiet splash plymouth.ignore-serial-consoles cfg80211.ieee80211_regdom=JP
この行の末尾に、半角スペースを一文字挿入してから、「video=HDMI-A-1:1920x1200@60D」などのようにディスプレイの解像度を追記します。「1920x1200」の部分は、お使いのディスプレイに適した値に設定してください。私の場合、ここに「1280x768」と記したことがあります(参考:株式会社クリスタージュ ディスプレイ解像度・サイズ 一覧)。
console=serial0,115200 console=tty1 root=PARTUUID=877fcbb5-02 rootfstype=ext4 fsck.repair=yes rootwait quiet splash plymouth.ignore-serial-consoles cfg80211.ieee80211_regdom=JP video=HDMI-A-1:1920x1200@60D
以上の記述を行ったら、ファイルを保存してテキストエディタを閉じてください。そして、microSDカードを Raspberry Pi に取り付け、電源を投入してみましょう。 うまくいけば、ディスプレイが表示されるでしょう。
なお、この設定を行ったときの副作用として、「Raspberry Pi の電源投入時にディスプレイが接続されておらず、あとから接続してもディスプレイが映る」という効果があります。

また、ディスプレイが映り起動した後、デスクトップ左上のメニューから「設定」→「Screen Configuration」を起動し、下図のように 「レイアウト」→「Screens」→「HDMI-1(または HDMI-A-1)」→「解像度」の項目を cmdline.txt に記した解像度の設定を合わせ、「Apply」ボタンを押す必要がある場合があります。
上図は、cmdline.txt に video=HDMI-A-1:1280x768@60D と記した場合の例です。

2. 用いている OS が一世代前の Legacy (Bullseys) の場合

2023年10月より前にリリースされていた OS である、Bullseye などを用いている方は、「config.txt」を編集する必要があります。 通常は、「config.txt」をダブルクリックすると、メモ帳などでファイルが開かれるでしょう。その中に、下記の1行が記されています。 すると、下図のようなファイルが開かれますので、6行目の「#hdmi_safe=1」という行の先頭の「#」を削除し、上書き保存してメモ帳を閉じてください。

なお、古い Windows を用いている方は、このファイルが正しく開けません(正しく改行されて見えない)。その場合「サクラエディタ (V2 (Unicode版))」のように改行を正しく処理できるテキストエディタをインストールし、そのサクラエディタで config.txt を開くようにしてください。
さて、「#」を削除して保存したら microSD カードを Windows から取り外し、Raspberry Pi に取り付け、電源を投入してみましょう。

ディスプレイに映像が映ったでしょうか。
ただし、映ったとしても画面の解像度は低い状態かもしません。 その場合、config.txt でさらに下記の設定を行うと、解像度を変更できる可能性があるようです(参考:ラズパイの電源を入れた後にHDMIを挿しても画面が表示される方法)。
下記の行の先頭の「#」を削除してディスプレイの幅 (width) と高さ (height) を適切に設定し、
#framebuffer_width=1280
#framebuffer_height=720
さらに、次の行の先頭に「#」を記述して無効化します。
dtoverlay=vc4-kms-v3d

OSイメージを用いてRaspberry Pi OSをインストールする

1. はじめに

Raspberry PiのOSである Raspberry Pi OS は、Raspberry Pi Imagerというソフトウェアを用いてmicroSDカードにインストールされます。このソフトウェアは、OSをmicroSDカードに書き込む時にOSのダウンロードも同時に行ってくれます。

職場や学校などでは、この方法でのOSのインストールに失敗することがあるようです。ネットワーク環境により、OSのダウンロードに失敗するためのようです。

そこで、職場や学校などでもOSのインストールが可能な方法を紹介します。Raspberry Pi Imagerを用いて、あらかじめダウンロード済のOSイメージをmicroSDカードに書き込むという方法です。

2. 必要なものの準備

それでは、「Raspberry Pi OS のイメージで OS を インストールする」方法を解説します。まず、皆さんが普段お使いの PC で Raspberry Pi OS のイメージをダウンロードします。
にアクセスしましょう。OSのイメージをダウンロードするページにたどり着きます。

「64-bit、アプリケーション数は通常、OSは最新」を選択する場合、ダウンロードページでは、「Raspberry Pi OS (64-bit)」の「Raspberry Pi OS with desktop」が該当します。ページをスクロールして下図の項目を見つけましょう。見つかったら、「Download」ボタンをクリックしてダウンロードします。執筆時点では 2024-07-04-raspios-bullseye-armhf.img.xz という名前の圧縮ファイルがダウンロードされました。
「32-bit、アプリケーション数は通常、OSは最新」を選択する場合、下図を選択します。
Pi Zero 2 W のようにメモリが少ない機種では下図の Legacy (32ビット) 版を選ぶと安定動作する可能性があります。
さらに古いOSのイメージを選びたい場合、以下のリンクからファイルをダウンロードすると良いでしょう。 あるいは、OSのバージョンを指定してダウンロードしたい場合、下記のリンクから zip ファイルをダウンロードすると良いでしょう。 さて、現在の Rasbperry Pi OS では、ダウンロードしたファイルの名前は「ファイル名.img.xz」となっています。古いOSイメージの場合は「ファイル名.zip」です。

本ページのタイトルに「イメージファイルを使って」とありますが、ダウンロードしたファイルはこの「イメージファイル」を「圧縮」したファイルです。圧縮の手法が、拡張子に表示されている「xz」または「zip」であるというわけです。

ですから、ここからの流れは通常ならば「圧縮ファイルを『展開』してイメージファイルを取り出す」→「イメージファイルを microSD カードに書き込む」 となります。しかし、本ページでは「展開」という作業は行わす、圧縮されたファイルのまま作業を続けます。 その理由は以下の二つです。
  • microSD カードに書き込むためのツール Raspberry Pi Imagerは、圧縮されたイメージファイルのままでmicroSDカードへの書き込みができる
  • xz で圧縮されたファイルは、Windows のデフォルト環境では展開できない
以下で、圧縮されたイメージファイルをそのまま microSD カードに書き込む方法を解説します。なお、便宜上「圧縮されたイメージファイル」のことを「イメージファイル」と呼ぶことがありますので、混乱しないようご注意ください。

3. Raspberry Pi Imager による OS イメージの microSD カードへの書き込み

ここでは、Raspberry Pi用OSのインストールソフトウェアであるRaspberry Pi Imager を用いてイメージファイルを microSD カードに書き込む方法を紹介します。
インストール済のRaspberry Pi Imagerを起動するには、検索窓で「ras」などと記入して現れるRaspberry Pi Imagerをクリックします。
さて、起動したRaspberry Pi Imagerで「OS (Operating System)」の部分の「OS を選ぶ (CHOOSE OS)」ボタンをクリックしましょう。現れた画面で下図のように「Use custom (カスタムイメージを使う)」を選択します。
すると、イメージファイルの選択画面になりますので、先ほどダウンロードしたファイルを指定します。下図は、ダウンロードフォルダにダウンロードされたファイルを指定している様子です。
次に、Raspberry Pi Imagerで、「ストレージ (SD Card)」の部分の「ストレージを選ぶ (CHOOSE SD CARD)」ボタンをクリックしましょう。microSDカードが接続済であれば下図のようにカードが現れますので、クリックして選択しましょう。

なお、外付けハードディスクなどをPCに接続しているとこの選択肢が複数現れます。microSDカードを表す適切な方を選択しないと皆さんの大切なデータが壊されてしまいますので注意して選択しましょう。
あとはRaspberry Pi Imagerで「書き込む (WRITE)」ボタンをクリックしましょう。「Would you like to apply OS customization settings?」という質問に「いいえ」をクリックし、 「(中略)本当に続けますか?」に「はい」をクリックすると、書き込み (Writing)が始まります。確認 (Verifying)までが終わると、書き込みが終了します。

下図の画面が出たらmicroSDカードを取り外し、その後Raspberry Pi Imagerを終了しましょう。取り外した microSD カードを Raspberry Pi にセットして起動することになります。